建設業の一人親方と従業員の違いは何か?
労災保険は、本来、労働者の業務または通勤による災害に対して保険給付を行う制度ですが、労働者以外でも、その業務の実状、災害の発生状況などからみて、 特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる建設業従事者には特別に一人親方の特別加入を認めています。これが、建設業の一人親方労災保険です。
つまり、従業員と一人親方が加入する労災保険は別のものとなります。
形式的には一人親方でも、実態として労働者である場合は、労働者として労災保険の適用を行う必要があります。
一人親方と従業員の違いについて
一人親方と従業員のどちらであるのかを判断するときにはいくつかのポイントがありますが、一番大きなポイントは、「指揮命令を受けているかどうか」という点ではないでしょうか。
一人親方の場合は、注文者の指揮命令を受けずに業務を行いますが
従業員の場合は、使用者の指揮命令を受けながら仕事を行います。
次に、作業で使用する工具類の所有がどちらの者かという点も判断材料になります。
一人親方の場合は、基本的には作業で使用する工具類等は本人が用意しますが
従業員の場合は、作業で使用する工具類等は使用者(会社)が用意します。
他にも、金銭のの支払方法にも違いがあります。
一人親方の場合は、支払いが外注費扱い(事業所得)となりますが
従業員の場合は、賃金支払いは給与扱い(給与所得)となります。
他にも判断のポイントはいくつかありますが、このような点を中心に確認して判断していくことになります。形式的には一人親方でも、実態として労働者である場合は、労働者として労災保険の適用を行う必要がありますので、事前にしっかりと確認をして加入手続きを進める必要があります。
一人親方の労働者性が認められる具体例・・・
大工の募集の広告を見て面接を受け、大工としてA社と「請負契約」を結んだXさんの働き方は以下のようなものでした。
- A社との請負期間中に他社の仕事をしたことはありませんでした。
- A社の現場では大工職人としての仕事のほか、ブロック工事などの他の仕事にも従事していました。
- 勤務時間の指定はありませんでしたが、朝7:30に事務所で仕事の指示を受け、事実上17:30まで拘束され、それ以降の作業には手当が支給されました。
- 現場監督からの報告・指示によって、A社から指揮監督を受けていました。
- 大工道具はXさん自身の所有物でしたが、必要な資材等の調達はA社が負担していました。
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このケースでは、XさんとA社の間には実質的な使用従属関係があったと認められ、XさんとA社の間の契約は「労働契約」であると認定されます。この場合、Xさんは労働者として、A社の労災保険の適用を受けることになります。
適切に労災保険に加入していないと・・・
事業主への保険料の遡及・追徴金の徴収
事業主が労災保険料等の納付を怠っていた場合は、最大2年間(3年度分)を遡って保険料の徴収をない、併せて保険料の10%を追徴金として徴収します。
給付された費用の徴収
事業主が「故意」または「重大な過失」により労災保険の加入手続きを行わないときは、療養を開始した日(即死の場合は事故発生日)の翌日から3年以内に給付された労災給付の、全部または一部を事業主から徴収します。
※療養補償給付および介護保障給付は除きます。
労災保険の加入手続きを行わない期間中に、業務災害や通勤災害が発生した場合
- 行政機関から指導等を受けたにもかかわらず、労災保険の加入手続きを行わない場合・・・
⇒事業主が「故意」に手続きを行わないものと認定し、当該災害に関して支給された保険給付額の100%を徴収します。 - 1には該当しないものの
労災保険の適用事業となった時※から1年を経過してなお手続きを行わない場合・・・
⇒事業主が「重大な過失」により手続きを行わないものと認定し、当該災害に関して支給された保険給付額の40%を徴収します。
※労災保険の適用事業となった時とは、労働者を1人でも雇い始めた時をさします。
(平成30年9月18日時点)