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私立高校の教員の労務管理の実情と学校の働き方改革の動向

 ここ数年、私学への労働基準監督署の立ち入り調査が増えてきています。そもそも、公立校と私立校では労働時間に関する取扱いが異なっているにもかかわらず、多くの私立校は公立校の基準に合わせて運営しているところがほとんどで、残業代がまともに支払われていないのが現実のようです。
 さらに部活動による時間外労働の問題もあり教育現場は大きく変わろうとしています。

 教育の現場に働き方改革は問題だというお話も耳にします。もちろん、教育というのは未来の日本を担う学生にとっては非常に大切なもので、教育の質を落とすことは未来の国益を失う事にもつながると思います。
 しかし、それをもって全く改革をしなくていいということではなく、教育の質を落とさないために変えることができない業務と、変えることができる業務に分け、できるところから少しづつ改善していくことが重要ではないでしょうか。

 最近の報道をみていると、教師の大変なところばかりクローズアップされているようです。一時期、飲食店がブラック企業の象徴のように取り扱われていたことを思い出します。その後、飲食店では人手不足に悩まされ続けています。
 このままでは教育の現場でも、優秀な人材が教師を目指さなくなるのではないかという不安を覚えます。働く環境が少しでも改善され、優秀な人材が教育者を目指し、質の高い教育が守られることを切に願います。

(毎月顧問先向けに発行している事務所通信第105号からの抜粋記事。)

◆4割強が36協定未締結 

 公益社団法人「私学経営研究会」は、昨年6~7月に全国の私立高校の約8割にあたる約1,100校を対象に「私学教職員の勤務時間管理に関するアンケート調査」を実施し(うち332校が回答)、その結果、4割強の151校が36協定を結んでいなかったことが明らかになりました。さらに、直近5年間で78校が労働基準監督署の立ち入り調査を受け、24校が是正勧告・指導を受けていたことが判明しました。 また、出勤簿に教員の出勤時刻を記入していない高校は208校、退勤時刻は67校に及びました。今回の調査は、今までは勤務実態が見えにくかった私立高校の教職員の労務管理について、十分に把握されていないという現状が初めて明らかになりました。

◆公立校の教員の違いとは?

 私立校の教員は、民間企業の社員と同様に労働時間や残業代について、労働基準法が適用されます。つまり、労使間で協定を結ばず法定労働時間を超えて残業や深夜労働、休日出勤した場合は労働基準法違反となります。 今回の調査では、177校が「調整手当」といういわゆるみなし残業代として一定金額を支給している現状も明らかになりました。公立校では、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」に基づき、残業代を支払わない代わりに、基本給の4%の支給(「教職調整額」)をすることが認められています。 そのため、多くの私立校では、公立校にならって残業代の代わりに「調整手当」として一定の金額を支払っているのですが、残業時間がその手当の相当分を超えた場合は違法となります。

◆学校の働き方改革についての議論が進行中

現在、中央教育審議会では、給特法の改正を含めた学校の働き方改革について議論をしています。12月6日に示された指針案では、教員の残業の上限を原則月45時間、年間360時間を超えないようにすると明記しました。これは民間企業の時間外労働の上限を定めた働き方改革関連法に沿った内容であり、また、いじめ問題への対応など特別な事情があっても月100時間未満、年720時間までとする制限を設けました。パブリックコメントを踏まえて年明けにも指針案を正式決定するとしています。

(平成31年2月3日時点)

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